2011年4月16日土曜日

核分裂

3)「核分裂」
各種放射線、特に代表的なもの(α線、β線、γ線、中性子線、X線) について簡単な説明をしました。
その次に、原子力発電の本質に迫るため、「核分裂」という現象について考えます。

「核分裂」とは、一般的には、大きな質量数を持つ原子番号の大きな原子(特に、ウランやプルトニウムが重要です。)の不安定な原子核が、ヘリウムの原子核より大きな原子核を1つ以上放出して分裂し、2個以上の新たな原子核に変わることを指します。ただし、ヘリウムの原子核を放出するα崩壊もこの核分裂に含める場合もあるようです。
次のウラン原子の核分裂を挙げ、その例を見てみましょう。


(235Uの核分裂反応の一例、Wikipediaより 作者によりパブリックドメインである宣言がされている)
青色の大きな丸235U(質量数235のウラン)原子核に対して、水色の小さな丸で表される中性子が入射すると、その中性子が持つエネルギーに応じたある確率でウランの原子核がその中性子を捕獲します。熱中性子を捕獲したウランの原子核は、およそ83%の確率で核分裂反応を起こすか、残りのおよそ17%の確率で核分裂反応を起こさずにγ線を放出して236Uとなります[8]
一つの例として、上の図ではたまたまクリプトン(92Kr)とバリウム(141Ba)に分裂していますが、他にも様々な放射性生成物へと分裂します。ウランの核分裂生成物の中には半減期が極めて短いものもあり、そのような核種は直ちに崩壊し、次の核種へと変化していきます。
特に、原子力発電所を運転して出力を安定させ長期間運用した場合、炉内の燃料ウランが核分裂及びその核分裂片がさらにβ崩壊して生成された物質のうち大きな割合を占めるものは、放射性のクリプトン、キセノン、セシウム、ヨウ素、ストロンチウム、ジルコニウム、プロメチウムなどがあります。
福島第一原子力発電所では、震災発生までは一号機から三号器までは安定した運転を継続していましたから、制御棒の全挿入による運転停止(スクラム)に成功した時点で、炉内にどれだけの放射性物質が存在していたかは計算により見積もることが可能です。
各炉の運転状況によってそれは多少異なるものですが、いずれにせよセシウム137とストロンチウム90はほぼ同量存在していたと考えられます。従って、事故発生からおよそ一ヶ月たった今になってストロンチウム90が大量に放出されたわけではなく、ヨウ素131やセシウム137の大量放出が確認されたとすれば、同時にストロンチウム90も放出されています。
[8]原子力百科事典 ATOMICA 原子核物理の基礎(4)核分裂反応

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